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ロコモティブシンドロームとは?

 



【ロコモティブシンドロームとは?】

運動器の障害により、移動機能に支障をきたした状態のことを言います。進行すると生活の自立性を阻害し、介護が必要となるリスクを高めます。

ロコモティブ(locomotive)は「運動の」という意味のほか、機関車という意味もあり、ロコモーションは移動や運転などの意味があります。シンドローム(syndrome)は「症候群」という意味なので、和名にすると「運動(器)の症候群」という意味になります。

【運動器とは?】

骨や関節・筋肉・神経・脳・脊髄など身体を動かすために必要な身体組織のことを運動器と言います。運動器障害は50歳以降に顕在化しやすい。

運動器の構成要素

運動器には
①身体の支えの部分である骨
②可動部分であり、衝撃を吸収する部分でもある関節や椎間板
③身体を動かしたり制動したりする筋肉
④筋肉に指令を送る神経系
があります。

運動器の発達

運動器が正常に発達するには、運動による機械的刺激が必要になります。この刺激のことをメカニカルストレスと言います。メカニカルストレスは、不足しても過剰になっても運動器の変形や発達不全、変性、外傷の原因となります。

成熟してからも、健康的な運動器の維持には適正なメカニカルストレスがあることが重要で、不足も過剰も健康的な運動器が保てなくなります。


【移動機能とは?】

立ったり、座ったり、歩いたり、昇ったりなど、目的を達成するために身体を動かす動作のことを移動機能と言ったりします。

例えば、日常生活動作の中でも、トイレに行ったり、ベッドから立ち上がったり、床から立ち上がったり、お風呂に入ったり。

歩くとは

歩くという動作は、立位姿勢のバランスをいったん前方に崩し、足を前方に踏み出すことでバランスを回復させる動作の繰り返しで歩いています。

歩行は全身運動であり、足首の屈伸や、膝や股関節の屈伸や腰のひねりなど、細かく微調整されながら目的の場所に足を接地しながら歩いています。

例えば、軸足ではない振り出し側の足はつま先と床との距離が1cm弱のわずかな距離に制御しながら私たちは歩いているのです。

【要介護状態の原因に!】

移動機能に支障をきたすようになると、つまずきが増えたり、バランスを崩してふらついたり、または転倒してしまうことがあります。転倒で済めば良いのですが、特に女性は高齢になり閉経とともに骨が弱くなることで骨密度が低下し、骨粗しょう症が進行したりします。

そのことで骨折をすることもあります。特に多い骨折は大腿骨頸部骨折、脊椎の圧迫骨折、橈骨遠位端骨折などがあります。

橈骨遠位端骨折は移動機能に大きな影響はありませんが、大腿骨頸部骨折や脊椎圧迫骨折は寝たきりの原因になることもあります。

筋肉と骨はメカニカルストレスがないと減少する

骨は全体重の約20%、筋肉は30~40%を占める重量のある組織で、運動器として使われなければ、メカニカルストレスの不足によって影響を受け、骨は骨粗しょう症を、筋肉はサルコペニア(筋肉減少症)をきたしてしまいます


【ロコモティブシンドロームを確かめる方法】

ロコモ度テストというテストが2つあります。

① 立ち上がりテスト

片足または両足で何cmの高さから立つことができるか?を計測します。

片足で40cmの高さから立ち上がれない場合はロコモ度1に該当します。

両足で20cmの台から立ち上がれない場合はロコモ度2に該当します。


② 2ステップテスト

なるべく大きな2歩の歩幅を測定します。

そして「2歩幅(cm)÷身長(cm)=2ステップ値」を算出します。

2ステップ値が1.1以上1.3未満の場合はロコモ度1に該当します。

・2ステップ値が0.9以上1.1未満の場合はロコモ度2に該当します。


※ロコモ度1と2の違い

「ロコモ度1」とは移動機能の低下が少しずつ始まっている状態です。

「ロコモ度2」とは移動機能の低下が進行している状態です。


【ロコモティブシンドロームの原因は?】

ロコモの原因は病気が原因のこともありますが、筋力の低下や体力の低下、関節の柔軟性の低下、バランス機能の低下などで移動機能が低下することもあります。

また、筋力・体力・関節の柔軟性の低下から関節負担が増え、関節軟骨のすり減りや、関節周囲の痛みを引き起こすことで移動機能が低下することもあります。

なので、膝痛や腰痛などの関節痛は「ロコモのバロメーター」として考えると筋力低下や柔軟性の低下に早くから気づき、対策を考えるきっかけになると言えます。


【二足歩行をする人だからこその身体的負担がある】

人は二足歩行をする生き物です。頭や腕、体幹の重みを吸収し、また衝撃を和らげるために脊柱は生理的彎曲があり、椎間板でもその負担を軽減しています。

そして股関節や膝関節の関節軟骨もその役割を担っていますが、二足歩行をすることになった人だからこそその負担は過剰になりやすいとも言い換えることができます。

軟骨や椎間板には血行がなく、新陳代謝の速度も遅いため、再生能力が弱く。そのため、運動の過剰や不足、肥満がリスクとなり、変形性の関節症や、椎間板の変性(脊椎症やヘルニア)をきたすことに繋がってしまいます。


【ロコモティブシンドローム予防のための対策】

病気が原因であるロコモの場合は病気の治療が最優先になると思いますが、筋力低下や柔軟性の低下、バランス機能の低下が原因のロコモの場合は、運動器の機能の向上が必要不可欠です。

また、病気が原因でのロコモの場合でも2次的に病気が原因で筋力やバランス機能が低下することもあるため、治療と同時進行で運動器の機能向上を図る必要がある場合もあります。

運動器と関係が深い疾患

骨粗しょう症、変形性関節症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、サルコペニアなどは頻度の高い疾患であり、運動器と深くかかわり、疼痛・関節可動域制限・筋力低下・バランス機能の低下など、人の移動機能を低下させます。

高齢者の特徴として、これらが関係し合い、複合して移動機能を低下させます。進行すると日常生活動作を制限し、要介護状態につながってしまいます。


【ロコトレ】

ロコモティブシンドローム予防のために紹介されている運動があります。

通称「ロコトレ」をイラストでいくつかご紹介したいと思います。


スクワット(下肢筋力向上が期待できる)

主に使う筋肉は大殿筋・大腿四頭筋・ハムストリングス



左図:片脚立ち(バランス能力向上が期待できる)
右図:踵上げ(下肢筋力向上が期待できる)主に使う筋肉は下腿三頭筋

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